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改正相続法の施行で改めて注目される遺言・相続

宮本 佐知子

要約

  1. 近年のわが国における高齢化の進展や、家族の在り方に関する国民意識等の変化に鑑み、2018年に民法の相続関係部分(相続法)が約40年ぶりに改正された。これにより、遺言制度に関する見直しが行われ、2019年1月13日から自筆証書遺言の財産目録の形式が緩和され、2020年7月10日から自筆証書遺言の保管制度が創設・開始された。今回の遺言制度に関する見直しにより、法的効力が認められる自筆の遺言書を作成・利用しやすくする仕組みが整えられたことから、本稿ではまず、遺言についてその種類と概要を示し、次に、自筆証書遺言について新たに創設された保管制度とともにその概要を紹介する。
  2. 遺言の作成状況を見る限り、遺言の利用は未だに低調と言える。しかし、遺産相続では、法定相続分よりも、遺言による相続分が優先される。遺言によって被相続人の意思が明確にされていれば、相続争いを防ぐことも、相続そのものをスムーズに進めることもできる。遺言は自分が取り組みやすい方法で作成しておくことが望ましいだろう。
  3. 最後に、2020年夏に公表された2018年の相続税統計を基に、相続税課税の現状を概観する。被相続人数のうち相続税額のある被相続人数の割合は8.5%となり、現行課税方式の下では過去最高となった。相続税額のある被相続人数は「課税価格階級1億円以下」が6割を占めることから、相続税にあらかじめ備えておくべき人は超富裕層だけでなくマス富裕層にも広がっていることを意味している。
  4. 世論調査によると、自分の財産を使い切りたいと答えた人の割合は60歳代以上で2割にとどまり、大半の人は何らかの形で自分の財産の残し方を考えている。そのため、家計の資産計画の中では、財産の残し方や相続税問題については現実的な話として考えておくべきであり、その考えを遺言書として作成する人も今後は増えて行く可能性があろう。