特集2:金融イノベーションの更なる進展

ステーブルコインと中央銀行デジタル通貨を巡って

淵田 康之

要約

  1. リブラのようなグローバル・ステーブルコインの導入は様々なリスクをもたらしうるが、既成秩序への影響が大きいというだけの理由で、これを拒絶することは建設的ではない。既存のマネーのあり方自体が、時代のニーズに応えられなくなりつつあるからこそ、リブラのような構想が浮上するという現実があるからである。
  2. 既存の「口座型」のデジタルマネーを進化させるという選択肢もあるが、グローバル・ステーブルコインは、第三世代のデジタルマネーという新たな選択肢の存在を示している。
  3. Big Techのプラットフォーマーが、第三世代のデジタルマネーを採用すれば、法定通貨の地位が揺らぐ事態も生じかねない。そこで、各国の中央銀行が第三世代型の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行し、国際送金にも応用する仕組みを構築していくことが考えられる。
  4. すなわち、今、問われているのは、グローバル・ステーブルコインやCBDCそのものの是非もさることながら、第三世代のデジタルマネーの供給を誰が主導すべきか、という点なのである。
  5. CBDC導入により、システミックリスクの軽減や金融政策の有効性向上も期待される。さらに、昨今のような緊急時における、国民への迅速かつ直接的な金銭的支援も円滑に実行可能となる。
  6. わが国の場合、諸外国に比べた決済サービスの立ち遅れが、今後より顕著となっていく可能性がある。多額の預金を抱えた銀行の運用難、金融政策の有効性低下などの問題も踏まえると、わが国は、世界で最も第三世代型のCBDCの導入が求められている国といって良いかもしれない。