特集2:金融イノベーションの更なる進展

上場株式の売買単位と個人向け証券取引のイノベーション

岡田 功太、片寄 直紀

要約

  1. 米国の証券取引所では、100株を取引単位とする単位株制度がありつつも、上場株式及び上場投資信託(ETF)を1株から発注できる。ニューヨーク証券取引所の全取引に占める単位未満株取引の割合は約45%に達しており、少額取引の割合は増加傾向にある。更に、米国では、1株に満たない端株取引サービスを提供する金融機関も数多く存在し、創造的なサービス提供を行っている。
  2. 例えば、フォリオ・ファイナンシャルは、投資家自身が投資対象及び配分を設定可能な「フォリオ」というバスケット取引サービスを提供し、モチーフ・インベスティングは、0.0001株単位でウェイト調整が可能なインデックス投資サービスを行っている。ストックパイルは、「◯株を◯ドル分」と記載されたギフトカード提供のサービスを展開している。これらのサービスは、全て端株の取引を基盤としている。
  3. 他方、日本では、上場株式の売買単位は、単元株である100株に統一されているため、単元未満株や端株取引サービスは普及していない。例えば3万円の値が付いている上場株式を購入するには1単元分の300万円の資金が必要であり、このような銘柄は決して珍しくはない。累積投資などのサービスはあるものの、100株という売買単位は、少額投資家も含めた裾野拡大を追求する際の一つの障壁になっている。
  4. 日本の売買単位を1株に引き下げることができれば、少額投資の選択肢の拡大に繋がる。また、それにより米国のような証券取引サービスの向上やイノベーションの創出を後押しできれば、日本の積年の課題である「貯蓄から投資」の促進、さらには日本の株式市場の活性化と競争力の向上に繋がるのではないか、と考えられる。