中国・アジア

中国における投資一任サービスの現状と発展の可能性

宋 良也

要約

  1. 欧米・日本などの先進国で普及している投資一任(投資顧問)サービスへのニーズは、富裕層の規模が拡大する中国においても高まってきている。ウェルスマネジメントへの転換が迫られる証券会社にとって、新たな事業機会としての投資一任サービス導入の必要性が大きい。
  2. 一方で、中国には投資一任関連の法制度の未整備や、海外資本規制による運用対象資産の分散の制約などの問題が存在する。従来、証券会社と基金管理会社は各自の資産管理プランで投資一任の類似の金融商品を提供してきたが、いずれも銀行理財商品の受け皿となってしまい、投資家のリスク許容度に合わせたポートフォリオの変更ができないことから、本格的な投資一任サービスとは言い難い。
  3. 投資一任サービスに係る規制改革の試みは、2019年10月の公募ファンドを対象とした投資顧問業務テストから本格的に始まった。同テストに参加する金融機関は、顧客のリスク許容度に合わせたポートフォリオ戦略に基づき、顧客の代わりに公募ファンドの売買・スイッチングなどの取引行為を実行することが可能である。
  4. 公募ファンドを対象とした投資一任サービスのテストには、今後エクイティ運用が強みである証券会社の参加も考えられよう。また、ネット大手が自社の金融プラットフォームを通じて、ロボアドバイザーによる公募ファンド投資一任サービスを一般投資家向けに提供する可能性が高い。規制強化された銀行理財商品からの資金流出が見込まれる中、中国における投資一任サービスがどのように展開していくのかが注目される。