中国・アジア

中国における従業員持株制度の拡大

塩島 晋

要約

  1. 近年、中国において従業員持株会を導入する上場会社が増加している。その背景としては、中国政府が国家の成長及び資本市場の持続的発展、企業の内部管理構造の改善等を促進するために、従業員持株会に係る制度を整備してきたことがある。
  2. 中国の従業員持株会では、上場会社(委託人)が証券会社等の資産管理機関(管理人)に従業員持株会の運営管理を委託する。また、運用期間は2~10年等に設定されており、満期を迎えると自動的に終了する点が、日本の従業員持株会との違いとなっている。
  3. 中国では、2020年1月7日時点で、中堅・大手の企業を中心に、656社の上場会社が従業員持株会を実施している。例えば、上場会社で初めて従業員持株会を導入した中国平安保険は、ストックオプション類似の制度と、退職まで保有できる日本に類似した制度を導入している。
  4. 中国における従業員持株制度の充実・普及が、離職率の低下を通じた企業経営の安定化に加え、労働者の資産形成支援、さらには中国資本市場の参加者のすそ野の拡大につながっていくのか、今後の動向が注目されよう。