特集2:拡大するプライベート・マーケット投資

コロナ禍で注目を集める米国の株式投資型クラウドファンディング

岡田 功太

要約

  1. 米国証券取引委員会(SEC)は2020年5月、株式投資クラウドファンディングに係る規則の一部を暫定的に緩和することを公表した。これは米国経済へのコロナ禍の影響を受けて、資金繰りが悪化した小規模企業等が、株式投資クラウドファンディングを迅速に実施できるよう定めた措置である。
  2. 米国の株式投資型クラウドファンディングの大半は、ウィーファンダー、スタートエンジン、リパブリック(エンジェルリストの関係会社)、シードインベスト(サークルの関係会社)において実現しており、これらファンディング・ポータルにおいて資金調達に成功したスタートアップ企業は、その後、レギュレーションAやレギュレーションDによる追加募集をしたり、ベンチャー・キャピタル・ファンドから出資を受けたり、IPOを実施して証券取引所に上場したりしている。
  3. また、米国のファンディング・ポータルは、資金調達の支援だけではなく、ブローカー・ディーラーや代替取引システム(ATS)としてSECに登録し、非上場株の流通市場を形成することで、更なるスタートアップ企業及び投資家の誘致を図っている。
  4. 実は、SECは2020年3月、非上場の資本市場へのアクセスに係る規則改正案を公表し、株式投資型クラウドファンディングの発行体の調達上限額を年間107万ドルから500万ドルに引き上げること等を提案している。ジェイ・クレイトンSEC委員長は、2017年の就任当初より、個人投資家に対する非上場株式市場の投資機会の拡大を主張しており、同規則改正案は、長期的な視点に立って、非上場株式市場の形成を促す施策として位置づけられる。
  5. ポストコロナの米国の資金調達及び投資機会の創出は、非上場株式市場を中心に発展する可能性がある。日本においても、株式投資型クラウドファンディングの枠組みを見直し、イノベーションを生み出す可能性がある小規模企業へのリスクマネーの供給を促進する必要があるのではないだろうか。