特集2:拡大するプライベート・マーケット投資

スタートアップ投資のフロンティアとなりつつある宇宙関連ビジネス

竹下 智

要約

  1. VC(ベンチャーキャピタル)等によって資金的に支援された宇宙関連ビジネスを手掛けるスタートアップは「宇宙ベンチャー」とも呼ばれる。2019年の宇宙ベンチャーへのエクイティ投資額は58億米ドルと過去最高となった。日本政府の宇宙関連予算35億米ドル(2018年)を大きく上回る。
  2. 宇宙ベンチャーに対する投資金額の推移をみると、2015年以降急増している。2社の宇宙ベンチャー(SpaceXとOneWeb)による巨額の資金調達が契機となった。背景には、多数の小型低軌道衛星を使い全世界にブロードバンド(高速大容量のデータ通信)提供を目指す「衛星コンステレーション」推進の動きがある。
  3. また、宇宙ベンチャーを資金的に支える投資家層の多様化も顕著で、宇宙に強い興味をもつ億万長者たち以外にもVCファンド、PEファンドなどが参入している。近年、宇宙産業における技術革新サイクルに変化がみられ、典型的なVCファンドにとって投資対象となりえる宇宙ベンチャーが増加したことが影響していると考えられる。
  4. 日本の宇宙ベンチャーの中にも大口の資金調達を実施するところも出てきている。今後、政府と民間の協力体制を具体的にどうやって実現していくかが注目されるとともに、宇宙ベンチャーに多額のエクイティ資金を供給するためのアイデア、仕組みの整備が求められる。