特集2:拡大するプライベート・マーケット投資

「起業家の宇宙時代」を支える新産業育成の仕掛け
-Xプライズ、NASA、ルクセンブルクの事例-

竹下 智

要約

  1. かつては国家主導の事業であった宇宙分野において近年、民間企業による新しい産業/ビジネスが立ち上がっている。その背景には民間の宇宙関連産業を立ち上げ、成長をサポートする「仕掛け」があったと考えられる。
  2. Xプライズ財団による最初の有人弾道宇宙飛行を競う賞金付きコンテストは、民間による商業宇宙旅行ビジネスの市場創出に大いに貢献したとされる。
  3. スペースシャトルの退役後、国際宇宙ステーションへの輸送手段を民間企業に委託することを決定したNASAの民間企業の能力開発プログラム(COTS)も、SpaceXの躍進の契機となるなど、関連ベンチャーの資金調達と、技術・ビジネス開発の両面に好影響を与えたと評価できる。
  4. ルクセンブルクは、宇宙資源探査を金融の次の国家重点セクターと位置づけ、資金、法整備、人材育成の側面から有力スタートアップの誘致、育成を推進している。宇宙資源探査がビジネスとして本格的に成立するのは2030年以降といわれているなかで、同国は先手を打って将来の宇宙産業の中核を担うことを狙っている。
  5. 上記の事例は、官(政府、公的機関等)と民間企業との連携という点では非常に興味深い取り組みであり、宇宙開発のみならず、産業振興や地方活性化に携わる日本の関係者への示唆にも富んでいる。