金融機関経営

地域金融機関による非資金利益拡大へ向けた動き

宮本 佐知子

要約

  1. 新型コロナウイルスの感染拡大で社会経済への影響が懸念されるなか、地域金融機関の収益環境はそもそも厳しい状況が続いている。近年、地域金融機関をめぐる経営環境は大きく変わり、今後の収益確保のためには、非資金利益の引き上げが重要である。地域金融機関にとって、法人と個人の両輪モデルへの転換は有力な選択肢であることから、本稿では、地域金融機関で進められている、個人向けビジネスにおける非資金利益の引き上げ策について事例と共に見てみた。
  2. まず、地域金融機関が導入を検討している口座関連手数料について、定量面と定性面からの考察を行った。その結果、現行方式での口座関連手数料の賦課は、金融機関収益の大きな支えにはならないと見られる。その一方で、高齢顧客にとっては、金融機関が想定する以上に負担となる可能性がある。このため、口座関連手数料の賦課については、慎重な検討と顧客サービスにおける工夫が必要になると考えられる。
  3. また、地域金融機関で近年見られている取り組みとしては、自己所有不動産の活用や、金融商品販売手数料の拡大、テクノロジーの活用が挙げられる。これらは収益獲得に結び付くと期待されるものの、収益貢献までにはある程度時間を要し、相互に影響を及ぼし合うと見られる。トップダウンで関連部署が連携することや、ステークホルダーの理解を得ることも大切になろう。
  4. 今後、地域金融機関では、持続的な収益拡大へ向けた有効な施策を見出すことが求められている。注意したいのは、短期的な利益確保のために、顧客基盤を棄損してしまうリスクである。顧客の信頼という大事な財産を守りながら、様々な可能性を模索し地域経済の健全な発展に資するよう取り組んでいくことが、地域金融機関には望まれよう。