金融・証券規制

最終化された米国の大手銀行規制の見直し
-リスク・プロファイルに応じたプルーデンス規制の再構築-

小立 敬

要約

  1. 米国FRBは2019年10月、銀行のリスク・プロファイルをプルーデンス規制の枠組みに反映させるテイラード・アプローチの下、総資産1,000億ドル以上の米国銀行および外国銀行のプルーデンス規制の枠組みを改定する最終規則を公表し、2019年末から適用を開始した。
  2. 従来はドッド=フランク法に基づいて、総資産500億ドル以上の銀行持株会社には厳格なプルーデンス規制が適用されてきたが、トランプ政権の下、2018年5月に成立した経済成長・規制緩和・消費者保護法が、厳格なプルーデンス規制の適用基準を総資産500億ドルから2,500億ドルに引き上げたことが背景にある。
  3. 最終規則によって、総資産1,000億ドル以上の米国銀行、外国銀行はリスク・プロファイルに応じて「カテゴリーI」から「カテゴリーIV」までの4つのカテゴリーに区分され、各々のカテゴリーに応じて厳格さの異なる自己資本規制や流動性規制、ストレス・テストの要件等が課せられることとなる。
  4. 金融危機以降、FRBはプルーデンス規制に銀行のリスク・プロファイルを反映させる取組みを行ってきた。今般のテイラード・アプローチによってリスク・プロファイルに応じたカテゴリーが明確化されており、従来に比べてより洗練された枠組みとなったという評価が可能であろう。
  5. ただし、外国銀行の扱いに関しては議論がある。特に具体的な争点となっているのが、外国銀行の米国支店に対して標準化された流動規制を適用するか否かの検討である。最終規則では具体的な措置は見送られたが、FRBは数カ月以内に検討する方針を明らかにしている。また、外国銀行の扱いについては、金融危機後の金融規制改革の重大な副作用として認識されている市場の分断につながるとの指摘もあり、最終規則が適用された後のFRBによる規制の合理性の検証が期待される。