アセットマネジメント

欧州における投信併合
-英国の事例を中心に-

神山 哲也、塩島 晋

要約

  1. 日本では、小規模投信(ファンド)が多数存在するという問題に対処するべく、ファンド併合を実施可能にするための制度面の整備が行われてきた。しかし、実績は2019年11月に発表された一件に留まっている。今後、自助努力による資産形成、資産運用の重要性が増していく中、ファンド併合等を通じて運用業界の効率化を図ることは一層求められるようになろう。
  2. 欧州では従来、ファンド併合が月間数十件というペースで行われてきた。EU域内におけるクロスボーダーのファンド併合を促進するための制度整備も行われてきた。EUの制度を国内法化した英国では、スキーム・オブ・アレンジメントと呼ばれる仕組みを用いてファンド併合が行われている。
  3. 英国のファンド併合事例を見ると、目的として、小規模ファンドを併合することによる規模の経済追求等を掲げた上で、ファンド・オブ・ファンズと通常のファンドの併合や、株・債券の組入比率の相違、デリバティブ利用の有無、分配頻度など、ファンドの形態や運用手法は必ずしも近似したものでなくても実施されている。
  4. 英国では、ファンドの規模が最適水準を大幅に下回っていると考えられる場合、運用方法等の細かな相違には拘らず、より総合的な投資家利益への配慮から、規模の経済を優先する姿勢がみられる。日本においてファンド併合を検討する際に、参考になるアプローチであると考えられる。