特集:巨大IT企業への金融規制

巨大IT企業の市場支配力を巡る議論と金融分野の競争政策

淵田 康之

要約

  1. 欧州連合(EU)に続き米国においても、GAFAに代表される巨大IT企業の市場支配力がもたらす問題を是正しようという動きが本格化しつつある。巨大IT企業に対して、事業分割を迫る措置も選択肢となっている。
  2. GAFAに対する事業分割論は、グラス・スティーガル法型アプローチとも言われる。1970年代以降、独占禁止法の適用が消極化したとされる米国においても、金融分野に関しては、伝統的に市場支配力の問題には注意が払われてきた。金融分野の競争政策が、巨大IT企業の問題を巡る議論にも応用されているのである。
  3. 逆に、GAFAに対する競争政策強化の潮流は、金融分野を含む他の産業にも影響を及ぼそう。VisaによるPlaid買収の試みが、競争政策当局による提訴を受けて撤回されたのは、その嚆矢とも言える。
  4. わが国においても、巨大IT企業の台頭がもたらす諸問題への対応策が導入されつつある。一方、わが国においては、銀行、決済、証券取引所など、金融分野における競争政策は、諸外国に比べて積極的とは言えなかった。金融のデジタル化が進展するなか、金融分野においても競争促進の重要性が再認識される必要があろう。