特集2:中国で台頭する金融プラットフォーマー

初の中国FinTechプラットフォーマーとして上場を果たした陸金所

宋 良也

要約

  1. 陸金所(LUFAX Holding)は、中国保険大手の平安保険(集団)有限公司(以下、平安グループ)傘下のFinTechプラットフォーマーである。2020年10月30日に、同社は米国ニューヨーク証券取引所(NYSE)への上場を実現した。中国の競合他社である、アント・グループは上海・香港への同時上場を計画し、京東HD傘下の京東数字科技HDも上海の科創板での上場を同じタイミングで試みたが、いずれも本稿執筆時点で実現していない。陸金所の上場は、中国のFinTechプラットフォーマーとして、初めて実現したケースと言える。
  2. 陸金所の前身は、平安グループ傘下のウェルスマネジメント子会社である。当初はP2P(ピア・ツー・ピア)レンディングを主要業務の1つとしていたが、2017年から始まった中国政府のP2Pレンディングに対する規制強化を受け、陸金所は徐々にP2Pレンディングを切り離していった。上場時における同社の主要業務は、商業銀行等と共同で行うインターネット貸付及びオンラインのウェルスマネジメントとなっている。
  3. 陸金所は、平安グループのFinTechビジネスの中核的な存在といえ、その上場は、平安グループのネット金融業界への進出の一環と理解できる。米国市場が選択された背景としては、国際業務の拡大を念頭に置いた海外投資家の中での知名度向上、変更持分事業体(VIE)スキームの維持、残存するP2Pレンディング業務が上海の科創板上場の障壁であったことなどが考えられよう。
  4. 陸金所は平安グループをバックにすることで、顧客層、販売チャネルや研究開発などに関し、他のFinTechプラットフォーマーとの比較において、独自の特徴を生かした事業展開を行っている。一方、主要業務であるインターネット貸付に対する中国政府の規制強化が始まっている。中国のFinTechプラットフォーマーのビジネスが大きく影響される規制動向の下で、陸金所が今後どのように対応していくのか、注目されよう。