アセットマネジメント

米国DCの「キャッシュ・アウト・リーケージ」解消策と日本の自動移換問題への示唆

岡田 功太、中村 美江奈、野村 亜紀子

要約

  1. 米国では、401(k)プラン等の確定拠出型年金(DC)加入者が離転職時に適切な手続きを行わず、結果的に早期引出に陥る「キャッシュ・アウト・リーケージ」が長年の課題となっている。その対策として、DC資産残高が5,000ドル以下の場合、あらかじめ指定された個人退職勘定(IRA)に自動移管する制度が導入されているが、問題の根本的解決には至っていない。
  2. そのような中、フィンテック企業のリタイアメント・クリアリングハウス(RCH)が提供するオート・ポータビリティ・プログラムの革新性は注目に値する。RCHはIRA自動移管サービス(デフォルトIRA)の提供業者だが、同プログラムでは、RCHの加入者データと参加するDCレコード・キーパーのデータとを照合することで、加入者が手続きを行わなくても、デフォルトIRA資産を新たに開設された401(k)プラン口座に自動的に移管する。受託者責任上の論点もあり、米労働省から時限的な規制緩和措置を得ている。
  3. 日本のDC制度では、加入者が離転職後6カ月以内に手続きを行わない場合、個人勘定資産が国民年金基金連合会(国基連)に自動的に移換される。自動移換者数は2021年4月時点で約100.2万人に達しており、iDeCoの加入対象者が大幅に拡大された2017年以降も増加している。抜本的な対策が求められており、移換手続きを行わない加入者資産の行き先を、国基連ではなくあらかじめ指定されたiDeCoとする「指定iDeCo制度」の導入等を、検討するべきではないだろうか。