アセットマネジメント

拡大する米国の社債ETF市場

岡田 功太

要約

  1. 米国の社債ETFの運用資産総額は、一貫して増加傾向にあり、2021年3月末時点で約6,300億ドルを突破した。投資家層の多様化も著しく、米国保険会社は、全米保険監督官協会が会計ルールを変更したことを受けて、社債ETF投資を活発化した。連邦準備制度理事会も、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響が拡大した際に、社債ETFを購入した。
  2. 米国の社債ETF市場が拡大した背景には、インターコンチネンタル取引所やマーケット・アクセス等の価格情報サービス事業等を展開する金融機関の台頭がある。前者は社債ETF等の設定・交換オペレーションを自動化するサービスを提供し、後者は同ETFのアスク・ビッド・スプレッド等の価格データをリアルタイムに算出するサービスを提供している。
  3. 社債ETFはかつて、市場の不安定化要因と考えられてきた。社債ETFの設定・交換を行う指定参加者は、グローバル金融危機以降の金融規制改革によって、現物社債のマーケット・メイキング機能の低下が指摘されているディーラーが担っている。そのため、指定参加者は、社債ETFの設定・交換オペレーションを常に円滑に遂行できるとは限らないとされてきた。
  4. しかし現在では、社債ETFは、市場の安定化に寄与するものとして評価されている。COVID-19危機が発生した際、平常時よりも多くの社債ETFの取引が正常に執行された。指定参加者は、社債ETFの市場価格に基づいて、原資産の現物社債の価格を推定することが可能となり、現物社債のマーケット・メイキング活動を迅速に再開させることができた。
  5. 投資家層の多様化、テクノロジーとサービスの革新、金融規制改革の進展が、米国の社債ETF市場を活性化させたと言える。こうした米国の社債ETF市場のダイナミズムには、今後も注目すべきであろう。