金融イノベーション

新展開を迎える中国のビッグデータ取引をめぐる動向

宋 良也

要約

  1. 中国におけるビッグデータ取引は2014年から注目され、2017年にかけて各地でビッグデータ取引所が設立された。もっとも、2016年に公布されたネット安全法への抵触の恐れが生じたことなどから、直近まで新設は停止していた。また、既存のビッグデータ取引所も順調とは言えない模様である。
  2. 転機となったのは、2020年4月に中国共産党中央委員会及び国務院が公表した「完全なる要素市場化配置メカニズムの構築に関する意見」である。同意見において、データを市場化メカニズムの重要要素として扱うことが明確化された。これを受け、各地方政府はビッグデータ取引に対する規則制定を開始し、ビッグデータ取引所の新設も再開されている。例えば、深圳市はデータに係る権利の明確化を図っており、北京市は北京国際ビッグデータ取引所の新設を推進している。
  3. 中国におけるこれまでのビッグデータ取引は、主に地方政府中心に進められているが、長期的かつ広範にビッグデータ取引を推進していくには全国レベルの立法・制度設計が必要となろう。今後、中国におけるビッグデータ取引がどのように発展していくのか、注目される。