特集2:確定拠出型年金と投資アドバイス

求められる確定拠出年金加入者向け投資アドバイスの解禁
―米国の制度整備からの示唆―

岡田 功太、中村 美江奈、野村 亜紀子

要約

  1. 米国では、1990年代以降に、確定給付型年金プランから確定拠出型年金プランへのシフトが進展する中で、加入者の運用商品の選択を支援する措置の必要性が高まった。米労働省は、1974年従業員退職所得保障法(ERISA)の厳格な利益相反管理規制を一定の要件下で緩和し、401(k)プラン加入者向け投資アドバイスの提供を認めてきた。
  2. 1990年代後半から2000年代前半にかけての段階的な規制緩和を経て、2006年年金保護法においては、(1)投資アドバイスの手数料が「レベルフィー」である、または客観的なコンピューター・モデルを採用すること、(2)投資アドバイス手数料等の詳細な情報開示を加入者に対し行うこと、といった要件が明確化された。
  3. また、投資アドバイス業者選定等を受託者として適切に行えば、雇用主が、個別の投資アドバイスの結果(損失)について責任を負わないこと等が明示された。これらを通じて、資産運用の専門家が、加入者のリタイアメント資産形成を後押しする態勢が強化された。
  4. 日本の確定拠出年金においては、運営管理機関を含む金融機関は、法令上の規制によって、加入者に対し投資アドバイスを提供することができない。しかしながら、確定拠出年金加入者が投資アドバイスというニーズを有することについて、日米に大きな相違はないと言ってよい。利益相反の管理方法については米国からの示唆も得つつ、確定拠出年金の投資アドバイス解禁に向けた制度改正が望まれる。