特集2:確定拠出型年金と投資アドバイス

米国401(k)プランのレコード・キーパーの生き残り戦略
―鍵を握るデジタル化と投資アドバイス提供―

岡田 功太、中村 美江奈

要約

  1. 米国401(k)プランのレコード・キーパーは、雇用主及び加入者に記録管理を含む様々な支援を提供するITシステム・サービス業者である。米国では、主に資産運用業、証券業、保険業を営む金融機関がレコード・キーパー事業を展開しており、米国401(k)プランの普及と共に同事業は成長してきた。
  2. 他方で、レコード・キーパーは、長年にわたる厳しい競争に加え、手数料開示をはじめとする規制強化もあり、構造的な収益性の低下に直面している。約10年前には約450社あったレコード・キーパーは、現在約160社まで減少している。レコード・キーパーの本格的な統廃合や事業売却は、過去20年間に少なくとも37件行われた。また、レコード・キーパー事業の収益水準は、2006年から2017年にかけて半減している。
  3. 生き残りをかけた事業改革が必要とされる中、レコード・キーパーは、大量の加入者情報を有しているという優位性を活用した取り組みを活発化させている。最大手も例外ではなく、フィデリティ・インベストメンツの包括的な福利厚生サービスの提供、バンガードのインフォシスとの提携、エンパワー・リタイアメントのマスミューチュアル及びフィフス・サード・バンクのレコード・キーパー事業買収等に、端的に表れている。そこでの鍵はデジタル化の推進とロボ・アドバイザー提供であることも見て取れる。
  4. 日本でも、私的年金の重要性が増す中で、確定拠出年金への期待は高まっている。日米の環境は様々な点で異なるものの、確定拠出年金の運営管理業界の活性化には、健全な競争促進や、デジタル・ソリューションの開発等が重要と言えよう。そのダイナミズムを経て、加入者の裾野拡大と、リタイアメント資産形成の拡充が期待される。