個人マーケット

資産クラス/投資対象としてのアート
―富裕層はなぜアートに投資するのか―

竹下 智

要約

  1. 超富裕層個人は資産の5%程度をアート(美術品)に代表される収集品で保有しているとされる。アートは資産運用・分散投資の観点から一つのアセットクラスとして認識されており、特に現代アートに対する注目度が高くなっている。
  2. 世界のアートの市場規模は641億米ドル(2019年)、国別では米国、英国、中国の3か国で82%を占めている。日本のアート市場規模は非常に小さい。
  3. アートの売買市場は、新作を販売する「プライマリー市場」と既存の作品を売買する「セカンダリー市場」の二つに大別される。後者ではオークションハウスが重要な役割を担っており、アート価格に及ぼす影響は非常に大きい。
  4. アート市場は、アーティストやコレクターだけではなく、オークションハウス、ギャラリー、キュレーター等、多様な職種、人材によって支えられており、これらが相互に影響を与えアート作品の価格を形成している。
  5. 欧米の金融機関では、富裕層向け金融ビジネスの一環として、アート関連の知識、経験豊富な人材が配置した専門部署を設け、コレクションに関するサポートやアート担保融資等アート関連のサービスを展開している。
  6. 最近では、高額なアート作品の分割所有による少額投資や来歴管理等へのブロックチェーン技術の応用などもみられる。
  7. 成長分野として富裕層を対象としたウェルスマネジメントビジネスへの取り組みを強化している日本の金融機関にも、アート関連への取り組み強化、それに伴う日本のアート産業の拡大への貢献が期待される。