時流

ESG と企業経営のあるべき姿
-経営者の力が差別化要素となる-

東京都立大学大学院 経営学研究科 教授 松田 千恵子

要約

環境・社会・企業統治(ESG)への取り組みに多くの企業は悩んでいるが、その背景には「経済的な成功」と「社会的な貢献」を対立軸として捉える企業の社会的責任(CSR)的な考え方が、本業における経営課題設定のパラダイムシフトを受け入れる障壁になっていることが挙げられる。本業において環境や社会に関する課題を考えなければ、長期的にしっかり儲かるポジショニングやビジネスモデルはもはや持続不可能である。すなわち、経営戦略の立案と実行自体を見直さなければならないということだ。その旗振り役として、「E」と「S」を踏まえた世界観と戦略思考を持って将来像を追求する経営者の役割は益々重要になる。「G」による規律付けもそれを後押しするだろう。