特別寄稿

グローバル国債の気候変動リスク定量化とベンチマーク戦略
-気候対応ベンチマークとキャリー・ロールダウン戦略の統合-

FTSE Japan Ltd. シニア・ディレクター 売野 隆一
野村證券株式会社 マネージング・ディレクター 菊川 匡

要約

  1. 保有ポートフォリオにおける気候変動リスク把握の重要性が高まる一方、これまでこのリスクが開示されているのは株式、社債といった企業のリスクにほぼ限定されていた。機関投資家の資産クラスで中核のひとつであるソブリン債券は、発行主体が国家であることから気候変動リスクを定量的に評価する枠組みがあまり議論されてこなかった。
  2. 本稿ではソブリン債券の気候変動リスクを評価する枠組みとして、企業と同様の物理的リスクや移行リスクについて国家のマクロ経済に及ぼす影響の観点から議論し、国別の気候変動リスクの定量化の試みを紹介する。
  3. 投資家が気候リスクをポートフォリオに簡易的に反映することができるベンチマーク・ソリューションとして、従来の時価総額加重型のグローバル国債インデックスを気候変動リスクのスコアに応じてウェイトを調整するティルティング法によるリスク低減手法を議論する。さらに国別セクターにおいて、投資効率に優れるキャリーおよびロールダウンを最適化した満期セクターの選択により、期待リターンの向上を同時に試みたケースを紹介する。