特集1:インパクト金融の潮流

持続可能な社会の実現に向けて不可欠なインパクトファイナンス

江夏 あかね

要約

  1. サステナブルファイナンスや環境・社会・ガバナンス(ESG)投資において、通常のファイナンスにない特有の要素として、環境面・社会面への効果を意味する「インパクト」が挙げられる。インパクトに着目したファイナンス(インパクトファイナンス)は、21世紀に入った頃から本格的に発展しており、市場規模も拡大傾向にある。
  2. インパクトファイナンスをめぐっては、国際連合環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)による「ポジティブインパクト金融原則」、国際金融公社(IFC)による「インパクト投資の運用原則」といったフレームワークに加え、Impact Management Project (IMP)やグローバル・インパクト投資ネットワーク(GIIN)の「IRIS+」を用いた評価手法等が知られている。日本でも、環境省の「ESG金融ハイレベル・パネル ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース」が2020年7月に「インパクトファイナンスの基本的考え方」、2021年3月に「グリーンから始まるインパクト評価ガイド」を公表している。
  3. インパクトファイナンスに関する課題としては、「インパクト・ウォッシング」等が挙げられる。インパクトファイナンスが健全に発展していくためのカギとしては、(1)インパクトファイナンスの質の確保、(2)データ、事例、研究等の蓄積、が挙げられる。特に、質の確保について、「ポジティブインパクト金融原則」等に沿ったアプローチを採ること、専門知識を有する外部評価機関から評価(レビュー)を受けること、公的機関が一定の要件を満たしたインパクトファイナンスについて認証ラベルを付与する仕組みを創設すること等が対応策として考えられる。