特集2:サステナビリティ開示の進化

EUのサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)の開始
-遅延する細則策定と各社の対応-

磯部 昌吾、富永 健司

要約

  1. 欧州連合(EU)では2021年3月10日、金融商品の環境・社会・ガバナンス(ESG)関連情報の開示を義務付ける、サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)の適用が始まった。SFDRは下位法令(細則)の策定作業が遅延しており、細則が決定していない段階でのスタートではあるものの、欧州の資産運用会社等は一斉に取り組みを開示している。
  2. SFDRは、金融商品の運用を行う資産運用会社のような金融市場参加者と、投資アドバイスを提供する証券会社等の金融アドバイザーにESG関連情報の開示を義務付ける規制である。開示対象は、エンティティ単位と、金融商品単位に分かれており、欧州金融監督機構(ESAs)の細則案では、それぞれにおいて実施面での課題が指摘されている。
  3. そうした中でも、欧州の資産運用会社は、ライト・グリーンやダーク・グリーンと呼ばれるSFDR第8、9条金融商品を一定程度揃えている。また、既存商品の大半でSFDRの枠組みを積極的に利用するケースや、SFDRへの対応を念頭に置いた新規商品の開発を目指すケースも出てきている。
  4. 今後のSFDRの細則の最終化と、EUタクソノミーのようなSFDRの開示内容に影響を与えるESG関連の規制を合わせて、投資家が得ることができるESG関連情報は更に増えることが想定される。EUから離脱した英国や、バイデン政権の下でこれから個別規制の検討に本格的に取り組む米国を前にして、EUの独自規制であるSFDRとその下でのサステナブルファイナンスが今後国際的にどのような影響を与えていくのか引き続き注目であろう。