ESG/SDGs

日本におけるSDGs債市場の動向と2030年に向けた課題

江夏 あかね

要約

  1. 世界では、グリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンドといった調達資金が持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する事業に充当されるSDGs債が2000年代後半頃から広がり始め、日本でも2010年代半ば頃から発行額が順調に伸びるとともに発行体の多様化が進んでいる。
  2. ブルームバーグの統計に基づくと、日本の発行体によるSDGs債の発行残高は2021年3月末現在、約565億ドルと、世界全体(約1兆5,327億ドル)の4%程度で、市場の主な特徴としては、(1)環境省によるグリーンボンド支援策等を通じた発行額拡大、(2)政府系機関による継続発行及びソーシャルボンドの存在感の大きさ、が挙げられる。
  3. SDGsのゴールである2030年まで10年を切る中、日本のサステナビリティ関連課題について現時点では達成から程遠い分野もある。例えば、ドイツのベルテルスマン財団等によると、日本について不平等の是正、ジェンダー、環境分野等の項目でSDGsの達成に向けた努力が一層必要な状況となっている。日本政府も「SDGs実施指針」や「SDGsアクションプラン」等を通じて優先課題や重点事項を示している。
  4. 本稿では、日本の主なサステナビリティ関連課題として、(1)エネルギー問題、(2)自然災害、(3)経済格差と貧困問題、(4)人口減少・少子高齢化、(5)地域経済の停滞、を取り上げ、SDGs債等のサステナブルファイナンスが対応することが可能な領域の例を示した。
  5. 日本のサステナビリティ関連課題が解決に向けて進捗するともに、SDGs債等のサステナブルファイナンスが健全に発展するためには、政府、企業、投資家、金融機関、国民といったステークホルダーがサステナビリティ関連課題を自分事として捉え、継続的に取り組むことが重要と言える。