特集1:サステナビリティと認証・評価

不動産セクターとサステナブルファイナンス
-評価・認証制度と共に続く発展-

江夏 あかね、加藤 貴大

要約

  1. 持続可能な社会を実現するための金融であるサステナブルファイナンス関連の市場で、不動産セクターは一定の存在感を示している。建築物による二酸化炭素排出量が総排出量に占める割合が4割近くにも上っており、低炭素・脱炭素経済社会への移行(トランジション)に向けて、相当程度の努力が求められていることが主因である。
  2. 世界では、環境性の高い建物である「グリーンビルディング」という概念が1990年代に入る頃から、英国のBREEAMや米国のLEEDといった評価・認証制度とともに浸透してきた。2000年代後半に入り、サステナブルファイナンスの代表的な手法である環境・社会・ガバナンス(ESG)投資が浸透し始める中、責任不動産投資(RPI)やGRESBといった不動産とESG投資を関連付ける取り組み等も背景に、アセットクラスとしての不動産の認知度が高まっていった。
  3. 不動産セクターにおけるサステナブルファイナンス関連市場では、持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する事業に充当されるSDGs債の発行や、投資プロセスの随所で評価・認証制度が活用されている。これは、同制度に、企業等のESG/サステナビリティに関連する取り組みの可視化といった機能があることや、国内外において経済的合理性に関する実証分析が蓄積していることが背景とみられる。
  4. 今後の不動産セクターにおけるサステナブルファイナンス関連市場の発展を見据える上での注目点としては、主に、(1)評価・認証制度の適切な活用、(2)新型コロナウイルス感染症問題を経たオフィスビル需要の変化への対応、(3)個人による住宅のサステナビリティの意識の向上、が挙げられる。