ESG/SDGs

3分の2を超えた日本の純投資家保有比率
-「緊張感を孕んだ相互信頼関係」の構築が重要に-

西山 賢吾

要約

  1. 日本の株式市場において、1990年度末時点ではキャピタルゲインやインカムゲインの獲得を目指す純投資家保有比率が約30%、安定的、永続的な取引等の関係構築を目的とする政策保有投資家比率が約70%であったが、持ち合いの解消を中心とした株式保有構造の変化により、30年が経過した2020年度末時点では、純投資家保有比率が3分の2を超えるとともに、政策保有投資家比率は約3分の1弱となった。
  2. 政策保有投資家比率がいわゆる「拒否権」のラインである3分の1を下回ったことは、日本の企業と株主との関係を考える上で非常に重要な分岐点に到達したことを意味する。さらに、各保有主体の推定議決権行使割合や、企業の考えや行動に対する潜在的な反対可能性を考慮すると、株主総会での会社側議案に対する潜在的な反対比率は49.3~52.3%と試算される。取締役選任議案等の普通決議議案が否決されることが特別なことではなくなってきている。
  3. 株式持ち合いや政策保有株式については、合理性の検証や縮減方針の開示などに加え、議決権行使助言会社の助言方針や、2022年4月より実施される東京証券取引所の市場改革などが誘因となり、引き続き緩やかな圧縮が継続すると考える。
  4. このような中で日本の企業、株式市場の国際的な存在感を高めるためには、「説明と開示」を更に拡充しつつ、企業が株主との間に「緊張感を孕んだ相互信頼体制を構築する」ことが重要と考える。