特別寄稿

見えない価値を可視化する
-第1回見えない価値をなぜ可視化するのか-

野村インベスター・リレーションズ
(野村資本市場研究所 野村サステナビリティ研究センター 客員研究員)
佐原 珠美

要約

  1. ESG(環境・社会・ガバナンス)・非財務情報の開示、説明に対する関心や重要性が高まる中、企業は膨大な時間やコストを費やしてこれらに取り組んでいるにも関わらず、企業の開示情報水準と投資家の求める水準の間には開きがあると指摘がされる。その要因の一つは、ESG・非財務情報を測る世界共通の物差しが未だ確立されていないことにある。
  2. 世界共通の基準や評価機関の乱立・不統一の原因には、(1)各規準の開示対象が異なる、(2)原則主義/細則主義、網羅性を重視する/重要性を重視する等、異なるスタンスをとっている、などが挙げられる。非財務情報開示を統一しようという動きが最近見られているものの、まだ途に就いたばかりである。
  3. 現状、「世界共通の物差し」がない中では、自社が重要と考える指標を打ち出すことや、その指標の重要性などについて投資家/ステークホルダーにロジカルに説明するという、「見えない価値の可視化」が必要である。企業が将来への可能性を秘めた非財務情報を客観性・比較可能性をもって伝えることができれば、投資家/ステークホルダーから適切な評価を得て良好な関係を維持する一助になるとともに、「見えない価値」向上への戦略を見出すことにもつながるであろう。