特集2:環境面の新機軸

環境面でサステナブルな経済活動を分類するEUタクソノミー
-分類基準の概要と金融規制等における利用-

磯部 昌吾

要約

  1. 欧州連合(EU)において、環境面でサステナブルな経済活動を定義するEU共通の分類基準「EUタクソノミー」が、具体的な姿を明らかにしつつある。大枠を規定するEUタクソノミー規則 が2020年6月22日に成立したことに続き、欧州委員会は、気候変動対応に貢献する経済活動の分類基準を詳述した細則案 を同年11月20日に公表した。
  2. EUでは、環境・社会・ガバナンス(ESG)に貢献する経済活動を資金面で支えるサステナブル・ファイナンスへの期待が益々高まっている。他方で、何がサステナブルな経済活動であるのかは必ずしも明確ではなく、ESGの評価基準のばらつきやグリーン・ウォッシュのリスクも指摘されてきた。
  3. こうした中で、EUは、6つの環境目標に関するEUタクソノミーを、真にサステナブルな経済活動に投資を振り向けるための最重要課題に位置付けており、EUの金融規制等における利用が着々と進みつつある。また、EUタクソノミーには、将来的に、(1)対象とする環境目標やその詳細な分類基準の見直し、(2)他のサステナビリティ目標への拡大、(3)EU域外への波及という観点から更なる拡張可能性がある。
  4. EUタクソノミーによる経済活動の分類は、環境面でサステナブルであるかという横串で新たな産業分類を構築するに近い行為といえる。気候変動対応に関連した欧州委員会の分類基準の細則案だけでも500ページ超にも上るため、その実装や運用、検証等には相応の負荷がかかることが見込まれる。幅広い環境問題が対象となることから、対処する優先順位も含めて効果的かつ効率的に投資を振り向けるために、欧州がEUタクソノミーをどのように運用していくのか今後も注目であろう。