個人マーケット

英国で誕生するISAミリオネア

中村 美江奈

要約

  1. 英国の個人貯蓄口座(ISA)では、資産残高が100万ポンド(1ポンド=160円換算で1.6億円)を超える「ISAミリオネア」が出現している。ISA口座は年間最大2万ポンドまでの投資等に対する非課税枠が付与される資産形成口座で、日本のNISAのモデルともなった制度である。
  2. 導入から20年超を経て、ISAの資産残高は約7,000億ポンドまで拡大し、英国の家計金融資産の約1割を占めるに至っている。特に当初から導入されている株式型ISAと預金型ISAが、全体の9割超を占める。投資家の中には、ISAミリオネアとなる程の成功を収める人もいる。
  3. ISAを提供する金融機関も、ISAを主力商品と位置付けて利用を支援するサービスに注力している。昨今では、ISAミリオネアに注目し、その成功要因を紹介するケースも見られる。特に多数のISAミリオネア顧客を擁する大手投資プラットフォームは、体験談に基づいた具体的な投資戦略に言及し、投資家への示唆となる情報を提供している。
  4. 英国では、ISAの強力な非課税枠が個人の資産形成を後押している。確定拠出型年金などの私的年金と合わせれば、非課税枠は夫婦で最大年間12万ポンドにもなる。また、ISAミリオネアのように、分かりやすい成功事例があることも利用促進には効果的であろう。
  5. 翻って、日本では、政府が「資産所得倍増プラン」を年末までに策定する旨を2022年6月に発表し、非課税枠の拡大や恒久化も含めたNISA拡充策に注目が集まっている。NISA億万長者とまではいかないかもしれないが、英国ISAに倣った個人・政府・金融機関が一体となった取り組みがあっても良いといえよう。