金融イノベーション

DeFiが試す新しい金融

淵田 康之

要約

  1. DeFiは、Decentralized Finance、すなわち分散型金融を意味し、分散台帳技術を活用することにより、金融仲介者などユーザー以外の管理主体を極力排除した金融取引が行われる。取引市場や貸借市場、ステーブルコイン、資産運用、保険など、様々な分野のDeFiサービスが登場している。
  2. DeFiは2020年夏頃より急拡大したが、ハッキングなどでユーザーのデジタル資産が流出するといった事件が頻発している。2022年5月には、時価総額第3位のステーブルコインがほぼ無価値になる事態が発生し、DeFi市場のみならず、デジタル資産市場全体にショックが及んだ。
  3. DeFiのリスクを踏まえ、規制・監督の強化が議論されつつあるが、金融仲介者の存在を前提とした従来の規制・監督を単純に適用するのは困難である。DeFiの改善には、その特性を踏まえた新たな規制・監督のアプローチが求められる。
  4. わが国は、2022年6月に策定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」におき、Web3.0やNFT(Non Fungible Token、非代替性トークン)の振興を掲げた。一方、ステーブルコインに関しては諸外国に比べて厳格な規制の導入を決定した。DeFiの議論は深まっていない。諸外国では、Web3.0、NFT、ステーブルコイン、そしてDeFiは密接に関わり合いながら成長を遂げていることを踏まえると、わが国においても、これらに対する包括的な取組みが求められよう。