アセットマネジメント

投資信託への投資を拡大するインドの個人投資家

北野 陽平、橋口 達

要約

  1. 近年、インドの個人投資家による投資信託への投資が急速に拡大している。家計金融資産における投資信託残高は2015年末の6.0兆ルピーから2021年9月末には20.6兆ルピーへと3.5倍に増加した。
  2. インドの個人投資家の間では、システマティック・インベストメント・プラン(SIP)と呼ばれる積立投資制度を通じた投資信託への投資額も増加している。投資信託への投資は2014年頃から拡大ペースが速まったが、その背景として、株価の上昇、金利の低下、高額紙幣の廃止が挙げられる。
  3. インドの個人投資家による投資信託投資においては、「ディストリビューター」と呼ばれる販売業者が重要な役割を担っている。インド証券取引委員会(SEBI)やインド投資信託協会等の取り組みにより、ディストリビューターは増加傾向にあり、2021年末時点で12万人(社)超になった。
  4. インドでは、投資信託保有者が主要都市に偏っている。SEBIはそうした状況を改善するため、資金流入額の多い上位30都市以外の地域での投資信託の提供において一定の要件が満たされる場合、資産運用会社がSEBIの定める総経費率の上限に30ベーシスポイントを上乗せした手数料を投資家から徴収することを認めた。
  5. インドにおける個人の投資信託保有者数は2021年10月末時点で1,857 万人となったが、総人口に占める割合は2%未満に留まる。投資信託を保有する個人投資家のさらなる増加を左右する注目点として、オンライン投資プラットフォームの普及と金融リテラシーの向上に向けた金融・投資教育の促進が挙げられよう。