金融・証券規制

英国政府が求める「投資ビッグバン」
-確定拠出型年金と長期資産ファンドを通じた成長資本供給-

磯部 昌吾、中村 美江奈

要約

  1. 国のボリス・ジョンソン首相とリシ・スナク財務相は、2021年8月4日、成長資本投資を通じて経済成長に貢献する「投資ビッグバン」を創出するよう国内機関投資家に訴える異例の公開書簡を公表した。
  2. 近年、英国では確定拠出型年金(DC)スキームが機関投資家としての存在感を高めてきており、英国政府は、DCスキームがベンチャー企業やインフラなどの非流動性資産への分散投資を行うことを通じて、産業資金の供給の担い手となることへの期待を高めている。
  3. 英国金融規制当局が招集した成長資本供給の促進に向けた民間専門家グループは、2021年9月27日、DCスキームによる非流動性資産への投資障壁を解消するべく提言を公表した。また、英国金融行為規制機構(FCA)は、同年10月25日、DCスキームを含めた個人の資金を呼び込む手段として、長期資産ファンド(LTAF)を導入する規則改正を最終化した。
  4. 老後の蓄えを作ることがDCスキームの趣旨であるが、その資金を上手く活用できれば、加入者が老後に暮らす経済社会の発展にも繋がる。積み上がる個人金融資産の一部が分散投資の一環で非流動性資産に回るよう、LTAFのような長期投資ツールを含めた制度整備を図る英国政府の試みは、成長資本供給の仕組みを考える上で参考になるといえるだろう。