時流

持続可能な財政の重要性

政策研究大学院大学 教授 羽白 淳

要約

英国リズ・トラス政権は、2022年9月の発足直後に政権の柱として大型減税を含む「成長計画2022」を打ち出した。しかし、市場等から厳しい評価を招き、最終的にほぼ全ての主要減税施策の撤回を余儀なくされた。結果、同年10月20日に、トラス首相は史上最短となる45日間での辞任表明に至った。背景には、将来見通しの不明確な成長計画により、財政の持続可能性、信頼が大きく懸念されたことがある。具体的には、計画公表時に、財政の第三者的監視機関である予算責任庁(OBR)の経済見通しが示されなかったことが指摘されている。

経済情勢に応じて経済政策を立案し、国債を財源とすることは日本でも続いている。英国での経緯を追いながら、OBRにも着目して、適切な財政見通しを伴う持続可能な財政の重要性を考える。