特集1:非財務情報開示の進展

重要性が高まる非財務情報開示と今後の論点

江夏 あかね

要約

  1. 企業がサステナビリティ課題解決に向けた財源を、持続可能な社会の実現に向けた金融(サステナブルファイナンス)も含めて金融市場から円滑に調達し、投資家等と向き合う上でカギとなるのが、情報開示(ディスクロージャー)である。情報開示では、企業価値に財務面のみならず、非財務面の要素が影響を及ぼす傾向が高まっているため、財務・非財務情報ともにバランス良く開示することが求められている。
  2. 非財務情報開示は、サステナブルファイナンス市場が本格的に拡大し始めた2010年代後半頃から、(1)国際的に共通する開示枠組みの開発、(2)一部の国・地域における開示の義務化、等を通じた充実化に向けた動きが見られている。
  3. 非財務情報開示は、今後も世界が持続可能な社会の実現を目指す中で、投資家等のステークホルダーのニーズも背景に充実化の流れが続くと想定される。今後の主な論点としては、(1)企業価値向上のツールとしての位置づけ、(2)情報の質の確保、(3)インパクトレポーティングも通じたインパクトの創出、が挙げられる。
  4. 企業経営において、非財務情報開示の重要性は今後もますます高まると考えられるが、開示がゴールではなく、質の確保やインパクトの創出とともに、開示プロセスも通じて価値向上にどのように活かしていくかがカギになろう。将来的には、金融市場において、非財務情報開示を価値向上のツールとして活かした経営を実現している企業が選好される動きが加速する可能性もあり、今後の動向が注目されるところである。