特集1:非財務情報開示の進展

PCAF基準及び温室効果ガス排出量の削減目標を通じて脱炭素化を推進する資産運用会社等の挑戦

富永 健司

要約

  1. 世界では、2022年7月末時点で、130か国超、730超の組織が2050年頃までの温室効果ガス排出量正味ゼロ(2050年ネットゼロ)の実現に向けた目標を示している。こうした中、温室効果ガス排出量の算定・開示基準、削減目標に係る枠組を通じて、投融資先を含めた脱炭素化に注力する、資産運用会社等の金融機関が増加している。
  2. 企業の温室効果ガス排出量の算定・開示について、金融業界においては、金融向け炭素会計パートナーシップ(PCAF)が投融資に係る温室効果ガス排出量の算定・開示基準を開発し、当該基準の普及・浸透を図る動きが注目される。
  3. 温室効果ガス排出量の削減目標に係る枠組について、資産運用会社においては、ネットゼロ投資フレームワーク(NZIF)、金融版サイエンス・ベースド・ターゲット(金融版SBT)等が主に活用されているようである。
  4. 国際連合気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で採択された「グラスゴー気候協定」で、2030年に温室効果ガス排出量の約45%の削減(2010年水準比)が必要とされており、金融機関の取り組みがさらに進展していくことが見込まれる。こうした中、今後、資産運用会社等によるエンゲージメントや投資ポートフォリオの再構築が本格化していく可能性がある。資産運用会社等の脱炭素化の推進による投資行動とそれがもたらす金融市場への変化と共に、2050年ネットゼロの実現に向けた進捗が注目されよう。