特集2:人権問題への焦点

日本でも注目される人権デュー・ディリジェンス
-社会課題の中核である人権尊重への取り組み-

西山 賢吾

要約

  1. 2022年9月13日、ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁『施策』推進・連絡会議は「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を公表した。これは、2020年10月に策定した「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」以降日本が進めている、社会課題の中核である人権尊重への取り組みをさらに促すものである。
  2. 人権尊重責任を果たす上では、企業は人権デュ―・ディリジェンスの実施が求められるため、本ガイドラインの策定により上場企業を中心に日本でも実施が進むと考えられる。
  3. 人権デュ―・ディリジェンスは、自社・グループ及びサプライヤー等(ステークホルダー)における人権に対する悪影響(負の影響)を特定・軽減し、取組の実効性を評価し、どのように対処したかについて説明・情報開示していくために実施する一連の行為である。そして、一度限りではなく継続的に実施することで、ステークホルダーとのエンゲージメントを深め、協働していくことにつながる。
  4. 人権デュ―・ディリジェンスの実施を始めとした企業の人権課題への取り組みを行う上では、経営トップがコミットメントして経営課題として位置づけることが肝要である。企業が人権課題に取り組み、労働者の権利を尊重していくことはSDGs(持続的な開発目標)の8に規定されているディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい雇用)を推進し、持続可能な経済成長を実現することにつながる。