ESG/SDGs

機関投資家から見たサイバーセキュリティ
-サステナブルな情報化社会実現に向けた論点整理-

江夏 あかね

要約

  1. 世界では1990年代終盤頃から情報化社会が急速に発展する中、サイバー犯罪や攻撃による企業等への被害や社会経済全体に及ぼす影響が懸念されており、サイバーセキュリティの重要性がますます高まっている。
  2. 昨今のサイバーセキュリティ関連の動向を機関投資家の視点で整理すると、情報開示規制、コーポレートガバナンス・コード、環境・社会・ガバナンス(ESG)評価機関と信用格付会社の評価・見解、が主要な論点として挙げられる。グローバルな投資家団体においても、2010年代頃から議論や取り組みが見られている。
  3. 情報技術(IT)・デジタル化、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の進展、サイバー犯罪・攻撃の複雑化・巧妙化・甚大化等を踏まえると、サイバーセキュリティ関連課題の対応に終わりを定めるのは困難と言える。そのため、サステナブルな情報化社会の実現に向け、企業、投資家、政府・規制当局を始めとした多数のステークホルダーが一丸となってサイバー関連課題に関する対応を続ける必要がある。
  4. 投資家は、(1)サイバー関連の動向やリスク、潜在的な価値をしっかり見極める眼を養うこと、その上で、(2)エンゲージメントを通じて企業に適切なサイバーセキュリティ関連対応を促すこと、ができる。そして、このような取り組みを通じて、投資パフォーマンスの向上のみならず、社会全体のサイバーセキュリティ強化にもつながり得るため、大切な役割を果たすと考えられる。