ESG/SDGs

グリーンファイナンスのハブを目指すシンガポール初のグリーン国債発行

北野 陽平

要約

  1. シンガポール政府は2022年8月15日、自国初のグリーン国債を発行した。発行額は24億シンガポールドル(同年11月15日の為替レートで約2,439億円、以下Sドル)、償還期間は50年であり、シンガポール国債として最長であるとともに、これまでに世界で発行されたグリーン国債の中でも最長である。
  2. アジアを代表する国際金融センターの1つであるシンガポールは、脱炭素経済への移行にコミットするのみならず、同地域におけるグリーンファイナンスのハブになる目標を掲げている。グリーン国債の発行は、そうした目標に向けた取り組みの一環である。
  3. グリーン国債は、2021年8月に施行された重要インフラ政府借入法(Significant Infrastructure Government Loan Act 2021)と2022年6月に策定されたシンガポール・グリーンボンド・フレームワークの下で発行された。調達資金は、国家的に重要なグリーンインフラプロジェクトに充てられる。
  4. グリーンボンドの発行額24億Sドルのうち、23.5億Sドルは機関投資家と適格投資家に割り当てられ、0.5億Sドルは一般個人投資家向けに公募された。一般個人投資家のグリーン国債に対する需要はさほど大きくなかったものの、機関投資家等からは旺盛な需要が確認された。
  5. シンガポール政府は、2030年までに最大で計350億Sドル(政府関係機関の発行分を含む)のグリーンボンドを発行する計画である。グリーン国債の安定消化・保有という観点から、一般個人投資家を含む幅広い投資家層による国債保有を促進することが重要と考えられる。また、グリーン国債の発行が、国内グリーンボンド市場のさらなる発展につながるかどうかも注目される。