ESG/SDGs

ESG要素の取り込みを通じてブランド力強化を図るロンドン証券取引所

林 宏美

要約

  1. 近年、環境・社会・ガバナンス(ESG)の要素を考慮したサステナブル投資がグローバルレベルで活況を呈している。その背景の一つに、世界の証券取引所が上場企業のESG情報開示の支援をしたり、ESG要素を重視する発行体の可視化を推進したりするなど、ESGへの取り組みを強化している点がある。国連のSSEイニシアティブに参加している110の証券取引所のうち、42の証券取引所がサステナブルファイナンスに特化した市場セグメントを有している。
  2. なかでも、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)は、ESG債等に特化した市場セグメントであるサステナブルボンド市場(SBM)に加えて、グリーンエコノミーマークという株式等を対象とした独自の認証ラベルを導入している点に大きな特徴がある。サステナブルファイナンスに特化した債券市場セグメントを導入している証券取引所は少なくない一方、株式等を対象とした認証ラベルも併せて整備している証券取引所は他に類を見ないといえよう。
  3. もっとも、グリーンエコノミーマークがニッチな認証ラベルにとどまれば、さらなる投資の触媒としての役割を期待しにくい。多くの証券取引所がサステナブルファイナンスの情報集積、可視化を推進するなかで、LSEGとしても差別化に向けた創意工夫の継続が必要となろう。
  4. 英国政府も2021年10月、サステナブル投資に関するロードマップを公表し、国としての方向性を示している。ESG投資のさらなる促進には、国際金融センター、サステナブルファイナンスハブとしての国や都市の総力を挙げた取り組みが必至であろう。