金融・証券規制

英国・EUにおけるリサーチ・アンバンドリング規制の見直し

神山 哲也、関田 智也

要約

  1. 英国及び欧州連合(EU)において、第2次金融商品市場指令(Mifid II)リサーチ・アンバンドリング規制の大幅な見直しが行われている。背景には、中小型株を中心にリサーチ・カバレッジが縮小するという同規制の副作用があり、資本市場活性化策の一環として、英国では投資リサーチ・レビュー、EUでは欧州連合理事会のMifid II改正案に盛り込まれている。
  2. 具体的には、義務としてのアンバンドリングを廃止し、(1)資産運用会社の自己資金からの支払い、(2)顧客資産からの支払い、(3)売買執行の対価とバンドルした支払い、の3つから選択できるようにすることが提案されている。他方で、リサーチ対価の支払いに関して、資産運用会社に適用される新たな開示規制の導入も提案されている。
  3. 加えて、英国・EUでは、中小型株のカバレッジ拡充策として、発行体スポンサード・リサーチを促進するべく、行動規範の策定が提案されている。英国では、証券取引所等が中小型株のカバレッジを補完するリサーチ・プラットフォームの創設も提案されている。
  4. 折しも米国では、セルサイドが従前の体制でMifid II顧客にリサーチ提供することを容認する証券取引委員会(SEC)のノーアクション・レターが失効したところであるが、今般の制度改正案が実現すれば、アンバンドリングの域外波及の懸念も後退するものと考えられる。
  5. 英国・EUにおいては、Mifid II後にセルサイド・バイサイドともに体制整備を進めているため、大きな影響はないとみる向きもある一方、中小型株カバレッジ等で一定の効果を見込む向きもある。今後、英国で金融行為監督機構(FCA)が規則改正を進めていくと同時に、EUで欧州連合理事会と欧州議会の協議が行われることになり、その行方が注目される。