特集:家計の資産形成促進の進展

米国の退職資産形成の促進を図るSECURE法2.0
-日本の確定拠出年金制度への示唆-

岡田 功太、中村 美江奈

要約

  1. 米国のバイデン大統領は2022年12月に、2023年包括的歳出法案に署名した。同法案には、SECURE法2.0と呼ばれている複数の条項が含まれている。トランプ前政権は、高齢化に伴う資産の取り崩し局面における課題解消を目的に「全地域社会における退職保障強化法(SECURE法1.0)」を成立させたが、その後のコロナ禍の深刻化やインフレの高進を受けて、今般バイデン政権はSECURE法2.0を成立させた。
  2. SECURE法2.0は、(1)401(k)プラン等の加入者の裾野拡大策、(2)インフレリスク及び長寿リスクの増大への対応策、(3)経済的な困窮への対応策、(4)放置された退職年金プラン資産への対応策等を定めており、米国民の退職資産形成の促進を図ることを目的としている。
  3. 日本でも確定拠出年金制度改革を検討する動きが本格化すると見られる。SECURE法2.0を踏まえると、(1)確定拠出年金の拠出限度額の引上げ及びキャッチアップ拠出の導入、(2)私的年金税制全体の在り方、(3)移換手続きを行わない加入者資産の管理手法の在り方等について、制度整備が必要になるのではないだろうか。