特集:家計の資産形成促進の進展

英国における初心者投資家へのアドバイス提供の施策
-規制緩和を提案する英国FCA-

橋口 達、磯部 昌吾

要約

  1. 英国において、金融資産の保有額が少ない個人に対する投資アドバイスの担い手が不足している所謂「アドバイス・ギャップ」の問題が、新たな局面を迎えている。英国金融行為規制機構(FCA)は、2022年11月、初心者投資家のためのコア投資アドバイス制度を導入する規則改正案を公表した。
  2. アドバイス・ギャップは英国で長年議論されてきたテーマである。FCAは、1万ポンド以上の投資可能資産を持ちながら多くをキャッシュで持つ個人を2025年までに2割減らす目標を2021年9月に掲げてきたところ、その具体策としてコア投資アドバイス制度を提案した。
  3. コア投資アドバイスでは、アドバイス対象を株式型個人貯蓄口座(株式型ISA)をベースにした範囲に限定することを条件に、ファイナンシャル・アドバイザー(FA)に対する規制を緩和する。これにより、FAが低コストで投資アドバイスを提供できるようにする狙いがある。
  4. 現実問題として、保有資産が必ずしも多くない個人が支払える手数料には限界がある。一方、FAにとって規制負担が投資アドバイスのコストの全てというわけでもない。コア投資アドバイス制度が、FAによる低コスト・アドバイス提供のビジネスをどのように促進し、アドバイス・ギャップの改善に繋がっていくのか引き続き注目といえよう。