特集:家計の資産形成促進の進展

多様な金融事業者が投資支援サービスを提供する英国ISA市場
-ISA専用投資一任サービスを始めたバンガード-

中村 美江奈

要約

  1. 米国の大手資産運用会社バンガードは、2022年12月に英国において個人貯蓄口座(ISA)専用の投資一任サービス「バンガード・マネージドISA」の提供を開始した。株式や投資信託等の売却益・分配金等が非課税となる株式型ISAを巡っては、多彩な金融商品への投資が可能であることから、従来から金融事業者が様々な投資家向けサービスを展開してきた。例えば大手金融機関や投資プラットフォームの多くは、一般証券口座と共通のサービスとして、リスク許容度や投資目的に応じて、複数のファンドやポートフォリオを提示し、顧客自身に選択してもらう簡易的な投資一任サービスを提供している。
  2. そうした競合他社に追随する形で提供が開始されたバンガード・マネージドISAは、投資家のリスク許容度や投資性向を踏まえて、低コストファンドで構成される5種類のポートフォリオのいずれかと投資家をマッチングし、投資家の代わりに運用管理を行う投資一任サービスである。ISA専用ポートフォリオを組成することで他社とは異なる特色を打ち出し、ISA市場におけるシェア拡大に挑んでいると推察される。
  3. 英国の株式型ISAは導入から20年以上が経過し、個人の資産形成において中核となる制度へと成長した。同市場は、金融事業者のサービス競争と個人の選択を通じて発展してきたと言える。バンガードの事例のように、ある程度成熟した現段階においても新たな挑戦が見られる。このようなダイナミズムがいかに生まれてくるかは、恒久化に向けて制度改正が進む日本の少額投資非課税制度(NISA)市場の今後を考える上で参考になるといえよう。