特集:家計の資産形成促進の進展

シンガポールにおける金融経済教育の拡充策
-MoneySenseを基軸とした官民一体の取り組み-

門倉 朋美、橋口 達

要約

  1. シンガポールでは、2003年10月に開始された国家金融経済教育プログラム「MoneySense」を基軸に、国民の金融リテラシー向上に向けた取り組みが官民において行われてきた。
  2. MoneySenseでは、主にウェブサイトを通じた情報提供やイベントの開催、職域向けの講演等が展開されている。さらに、シンガポール国民のファイナンシャル・プランニングを促すべく、MyMoneySenseと呼ばれる家計管理のデジタル・ツールも提供されている。
  3. シンガポールでは、初等教育から中等後教育の学校カリキュラムに金融経済教育に関連する内容が組み込まれているほか、各学校の金融経済教育活動を支援する補助金制度が設けられている。また、金融機関と大学が協力し、対面での金融経済教育の提供者を増やす「トレーナー育成プログラム」も実施されている。
  4. 日本では、岸田政権が掲げる資産所得倍増プランにおいて、官民一体となった金融経済教育を戦略的に実施するための中立的な組織として、金融経済教育推進機構(仮称)の設立が盛り込まれた。同組織が日本の金融経済教育を拡充させていくにあたり、シンガポールの官民における取り組みは、一つの参考事例となろう。