コーポレートファイナンス

多様なステークホルダーへの分配という観点から見た日本企業
-自動車セクターを中心に-

神山 哲也、調査協力:小林 正憲(野村證券名古屋コーポレート・ファイナンス部)

要約

  1. 日本企業は過去10年ほど、株主重視の姿勢を強めてきた。しかし近年では「ステークホルダー資本主義」など、多様なステークホルダーに対する長期的な価値創造を追求すべきという考え方も台頭してきた。
  2. 日本の産業の中でも特に幅広いステークホルダーを有する自動車セクターをみると、各ステークホルダーにバランスよく分配・貢献してきた。トヨタのように、1935年の「豊田綱領」に遡るステークホルダー重視の姿勢、分配の原資を生み出す付加価値を積み上げてきたことが背景として挙げられる。
  3. 今後の課題としては、従業員の株主化等を通じて従業員と株主利益とのバランスを如何にとるか、投資家による企業評価の考え方とエンゲージメントに対する姿勢が変容していることへの対応などが挙げられよう。今後、日本企業にとって、自動車セクターの取り組みは、倣うべき一つのモデルになると考えられる。