金融イノベーション

国際金融都市シンガポールと香港における暗号通貨の規制整備

北野 陽平、王 月

要約

  1. アジアを代表する国際金融都市であるシンガポールと香港は昨今、金融イノベーションの促進に向けた取り組みの一環として、ブロックチェーン技術を活用したデジタル資産市場の振興に重点を置いている。その中で、暗号通貨の規制整備が大きな課題の1つとなっている。背景には、世界的な暗号通貨市場の混乱がある。
  2. シンガポールは、総じて暗号通貨に肯定的な国として知られてきた。しかし、シンガポール金融管理局(MAS)は近年、一般消費者の暗号通貨取引への慎重な姿勢を強めており、2022年に暗号通貨取引所による公共の場でのマーケティングや宣伝を禁止した。MASは今後、一般消費者向けのサービス提供をさらに制限する方針である。
  3. 香港では従前、金融事業者はプロ投資家に対してのみ暗号通貨関連商品の提供が認められていた。しかし、香港証券先物委員会(SFC)は2022年、暗号通貨関連の上場投資信託(ETF)を一般個人投資家に提供することを認可した。SFCは今後、暗号通貨取引所が一般個人投資家向けにサービスを提供することを認める方針である。
  4. 香港はデジタル資産の中でも暗号通貨に特に前向きな姿勢であるのに対し、シンガポールは他のデジタル資産を推進している。双方のアプローチは異なるものの、デジタル資産市場を振興するという共通の取り組みは、金融イノベーションの促進を通じて国際金融センターとしてのさらなる地位向上を目指す両者にとって意義が大きいと考えられる。