中国・アジア

中国共産党第20回党大会の政治報告から見る金融・資本市場の改革・開放の方向性

関根 栄一

要約

  1. 2022年10月16日から22日までの7日間、北京市で中国共産党第20回全国代表大会(第20回党大会)が開催され、党トップの総書記に習近平国家主席を再任し、2期10年を経て、3期目の長期政権が始動した。第20回党大会の初日の16日、習総書記は政治報告を行い、2020年から2035年までと、2035年から21世紀半ばまでの2段階から成る今後の施政方針を表明した。
  2. 政治報告は、中国式現代化の推進を旗印に、全体として計15章から構成され、経済分野は第4章「新たな発展の形の構築を加速し、質の高い発展の推進に力を入れる」を中心に盛り込まれている。資本市場では、直接金融の割合を高める方針が示されるとともに、市場でのリスク対応に向け、管理監督を強化する方針も示されている。
  3. 経済分野での「制度型開放」を進める方針の下、中国証券監督管理委員会(証監会)は、資本市場において、企業のクロスボーダーでの資金調達の拡大を更に支援し、国内外投資家のクロスボーダーでの投資を更に利便化する方針である。前者では中国企業による海外市場でのグローバル預託証券(GDR)の発行支援、また、後者では中国本土・香港間のストックコネクトの拡充といった動きが出ている。
  4. 資本市場の「質の高い発展」に向けた取り組みでは、証監会は、機関投資家の育成や、外資系金融機関の中国本土での誘致促進を進める方針である。中国本土市場と本土外市場との間の証券投資資金の移動にも関連する人民元の国際化では、秩序立てて推進するという方針の下、上海外国為替市場での取引時間の延長といった動きが出ている。
  5. 2023年は、3月上旬の全国人民代表大会で金融管理監督体制の改革が行われたが、資本市場の改革・開放に関する方針そのものは今後も継承されよう。また、日中間には資本市場の協力に関する交流の枠組みや上場投資信託(ETF)の相互上場といった実績がある。今後、日中両国の官民の相互協力や市場間連携の重要性も、さらに高まっていくものと期待される。