特集1:金融システムへの不安再燃

米国SVBの破綻要因の分析と預金保険制度改革の検討
-米国当局による反省と今後の課題に学ぶ-

小立 敬、橋口 達

要約

  1. シリコンバレー・バンク(SVB)の破綻に始まる2023年3月の米国の銀行システムの混乱を受けて、連邦準備制度理事会(FRB)及び連邦預金保険公社(FDIC)は、4月末から5月初にかけて報告書を相次いで公表した。
  2. FRBは、報告書においてSVBの経営の失敗が破綻に直結したとする一方、SVBの脆弱性の程度を十分に認識できず、SVBに速やかに問題の是正を促すような監督措置を講じなかったという監督の失敗を挙げる。その上で今後の課題として、(1)リスク特定の強化、(2)レジリエンスの促進、(3)監督当局の行動変化、(4)プロセスの強化を掲げた。
  3. FDICは、テクノロジーの変化によって預金引き出しのリスクが高まっているという問題意識に基づいて預金保険制度改革を検討する報告書を公表した。(1)限定的な預金保護、(2)全預金保護、(3)決済預金保護という三つの選択肢を提示し、銀行のリスクテイクや資金調達、広範な金融商品市場への影響を踏まえながら、金融安定性を向上させる最も望ましい選択肢として決済預金保護を挙げる。
  4. SVBの破綻の教訓として、ソーシャルメディアと金融テクノロジーがもたらすデジタル・バンクランは、銀行の存続可能性に重大な影響を及ぼすことを学んだ。日本でもデジタル・バンクランが発生することを想定しつつ、金融機関は最低限、緊急時の資金調達に関する手段と能力を再検証することが求められよう。米国当局の議論は緒に就いたばかりであり、さらに議論を深めていく必要があるように思われる。