特集2:中国規制改革の展開

中国共産党第20回党大会後の金融管理監督体制改革
-党中央による金融分野への指導を強化-

関根 栄一

要約

  1. 2023年3月、国務院(内閣)と中国共産党中央委員会(党中央)は、2022年10月の中国共産党第20回全国代表大会(第20回党大会)で発足した習近平指導部第3期目の目玉となる党・国家機構改革案を公表した。党の機構改革案のうち、金融分野では、党中央に新たに中央金融委員会、中央金融工作委員会が設立され、党中央による金融業務に対する統一・集中した指導を強化することとなった。また、中央金融工作委員会は、2021年9月から始まった中央規律検査委員会による金融当局・金融機関への検査結果を踏まえ、さらに綱紀粛正や腐敗取り締まりを担うことになる。
  2. 同様に国家機構改革案では、中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)を廃止し、新たに国家金融監督管理総局を設立して、証券業を除く金融業の管理監督を一元的に行うとした。また、中国証券監督管理委員会(証監会)を国務院事業単位から国務院直属機関に変更した。
  3. 証監会については、国家発展改革委員会の企業債発行審査の職責が移管され、社債の発行審査業務を一元的に担当することになった。また、証監会は、国家金融管理監督総局と同様、国務院直属機関として、定員・給与面でも国家公務員と同様の管理が行われることとなった。
  4. 中国人民銀行(中央銀行)については、1998年に形成された本店-広域9支店-本店直属営業管理部・省都中心支店-市レベル支店-県レベル支店の5階層から、本店-31の省レベル支店-市レベル支店(県レベル支店を廃止・移管)の3階層の体制に25年ぶりに再編・簡素化され、民間企業及び小規模・零細企業の資金調達難に対応するきめ細かい金融政策が党中央から同行に求められることとなった。他に、地方の金融管理監督体制改革や、国有金融機関に対する国の出資者管理体制の整備も進められることになった。
  5. 国家金融監督管理総局は2023年5月に発足し、党書記を兼務する総局長の金融改革や対外開放に対する指針が出始めた中で、今後は、党中央に新設される二つの委員会のトップ人事や機関設計に注目が集まるだろう。