個人マーケット

アジアにおけるファミリーオフィス・ハブとしての地位向上を目指すシンガポールと香港

北野 陽平、王 月

要約

  1. アジアを代表する国際金融都市のシンガポールと香港は近年、国際的なウェルス・マネジメントのハブとしての地位向上に向けて、ファミリーオフィスの誘致に取り組んでいる。
  2. シンガポールでは、ファミリーオフィス向けのインセンティブが提供されていることもあり、ファミリーオフィスが右肩上がりに増加してきた。政府・金融規制当局は、「質の高い」ファミリーオフィスを誘致する姿勢を示すとともに、専門人材の育成・開発に取り組んでいる。
  3. 香港は、巨大市場である中国本土とのゲートウェイとなっていることを強みとする。香港政府・金融規制当局は、ファミリーオフィス設立支援チームの設置や税制優遇制度等のインセンティブを通じて、ファミリーオフィスの誘致を強化している。
  4. アジアのファミリーオフィスは、長期的に資産を保全するという観点からサステナビリティを重視し、サステナブル投資やフィランソロピー(社会貢献)への関心を高めている。そうした中、シンガポールと香港では、サステナビリティ関連の取り組みも促進されている。
  5. 今後、シンガポールと香港におけるファミリーオフィスの増加を後押しし得る要因として、(1)アジアにおける中長期的な超富裕層の増加と資産承継の進展、(2)スイスのウェルス・マネジメント市場の地位が相対的に低下する可能性、が挙げられる。